設計した人はどなたでしょうか。押出成形を全く知らない人が設計したのでしょうね。もっとも、知っていて設計する人はほとんどいない。機能第一です。
冷却金型を何処で割って製品が通る隙間を作るの?最初溶融樹脂を冷却金型に通すとき、どうするの?単純にこの二点をどうするのか考え込んでしまう。
日本では塩ビで作っていたが、ABSかPSに替えたいという要望もあった。なお難しい。これらを含めて、かなり難しそうだが、断る事は私のプライドが許さない。
1 冷却金型
多くの製品は二つ三つに分ければ充分だがこの製品は四つ割にするしかなかった。最初、金型に通す時、上の型ははずしておき、引き取り速度が一定になった時、始めて、蓋をするように押さえる。この行程のテクニックはかなり慣れた器用な人でないと難しい。
Singaraja
Taman Seokasada Ujung Bali
2 溶融金型
製品の両端の隙間が狭い、こういう製品の口金は広げて作るのが常識、これをそのままの形で、ただ倍率を掛けるだけでは溶融樹脂がくっついてしまい冷却金型に通しにくい、この製品は特に内側の梁や線があるので、なお広げる必要がある。赤線のようにする。
肉厚と各部の長さのバランスがピッタリでなければ冷却金型に通らない。完璧でなければならない。樹脂の溶融粘度、樹脂の種類、色、温度、これらはそれぞれ相互関係があるが、これらが変われば出方が変わるので、一定した原料を使って隙間を決めなければならない。これらが変われば、また、最初から調整のやり直しである。また繰り返し、修正とトライをしなければならない。
溶融粘度が変わると周りと中心との樹脂の流れ速度が変わる。速度が変わるという事は、厚さも長さも変わる。真ん中が早ければ梁の部分が冷却金型に一杯になってしまい、外側の厚さも長さも短くなってしまう。全体のバランスを一定にする事は大変難しい。PVCならこんな事はあまり苦労しない。
3 色あわせ
この製品で振り回されたのが色の問題でした。アイボリーでサンプルをもらった。黄色味がかった白色だった。色の事も難しい。色あわせの事である。客先の腹づもりでどうにでもクレームを付けられる。もともと、この製品はインドネシアの購買は日本からの輸入を止めたいと考えて私のところへ来た。しかし、日本本社はなにかの事情で、日本のサプライヤーをきる事を望まなかったようだ。要するに、どんな安い要求に合った製品を作っても本社の承認は得られないという事だった。
製品の形状より色あわせが先である。この製品に関しても同じだった。しかし、客先にどんなに説明しても、わかってもらえない。ナチュウラルでまず、形状を出す。日本へ送る。OKが出る。次に色合わせをするが、当然、今までの金型では肉厚のバランスが変わり、成形できないので、金型を修正を繰り返し、寸法どおりの形状を作る。日本へ送る。色がNGになる。また色あわせにやり直しで、金型の修正を繰り返す。今度は絶対、色も形もOKのはずと日本へ送る。日本の返事は、色NG。その時、基本のサンプルを送ってきた。その色が、初回のサンプルに較べると全く違う色、青が若干入った白だった。がっくりである。
それでも、くじけず、色あわせをした。今度は日本から製品を承認する担当者がインドネシアに来ているので、帰る前の間にあわせて欲しいといわれ、かなり集中してサンプルを作って見せた。これならいいでしょうと、OKが出た。やれやれと、思った。ところが、一週間後くらいに、日本で色を確認したら、やはり、OKは出せないと言ってきた。インドネシアと日本では日の光や蛍光灯の色が違うから違って見える、日本で見て確認しなければOKは出せないと言ってきた。もう、いい加減にしてよ、と、思った。
それでもあきらめず。色サンプルを送った。今度は本当にいろがOKになってから金型を修正し形状を出そうと思い、その旨説明し、形状が寸法公差から出る製品だったが、色見本だけとして日本へ送ってもらった。今度の返事は、形状が出ていなければ色評価は出来ない。形状が寸法どおりになれば見た目の色が変わるかもしれないからだという。
これで、手を引かせてもらった。結局日本の本社に、振り回された。インドネシアの購買は謝ってくれたが、こちらにしてみれば、厳しい経験だった。
まだ、あきらめてはいない。また、インドネシアで挑戦しようと思う。
10年後
あれから何年過ぎたでしょうか。その間、インドネシアで作れる人も会社も無いのです。PT.NANBUでやらせてもらうことにした。本当は、南部の本社から来た人にやってもらおうと、TOSOを紹介した。 別の製品として紹介するリフレレールと共に、見積もりと、スケジュール提出を頼まれた。当然、その人30年以上の押出のベテラン、日本の会長の推薦、申し分ない、と、思っていた。最初の仕事としては最適だろうと思っていた。その時私がやっていても直ぐ量産になる仕事があって、それが終わったらその人に次の製品の試作を始めてもらうには良いタイミングだと思っていた。ところが、見積もりを出すどころか、できる、出来ないの,返事もしていないし、だんまりの様子が二か月も続いた。試作の機械は空いてしまっている。
もう、責任者を譲り渡したのだから、私に何も権限が無くなっていたにもかかわらず、客先から直接私にどうなっているのか問合せが入る始末、本社の会長からは売り上げを増やす催促が私に入ってきた。お門違いもいいところだが、ご本人手も足も出ないらしいので仕方が無い、この仕事も自分がやることにした。図面やサンプルをご本人どこかへしまったのか、無くしてしまったのか、見当たらない。
バカバカしくて、書きたくないが、こういう人もいるということで、書く。「図面を無くしてしまったなら、あなたが、誤って、もう一度図面を貰ってください」と頼んだ。ご本人曰く「私にはそういうことはできません、私の仕事ではありません、太田さん、自分で貰ってください」
でした。空いた口がふさがらない。
てな訳で、ウエートバーを作ることになった。ところが、PPやABSやPSでキタガワの時はサンプルを作ったが、実を云うと、硬質塩ビの異形品は40何年押出をやっているにもかかわらず、やったことが無い。他の会社は殆ど硬質PVC主体なので、見せてもらっとことは限りなくあるし、どういう金型を使っているかも見てはいたので、蘊蓄は云うことが出来ので、PVCとその他の原料での押出成形の相違点などと文章を書くことはできる。
しかし、自分でやるのは始めてであった。インドネシアの原料メーカーを探すことから始めた。金型も、順次、溜まりの無い様に改善していった。ちょっとでも溜まりがると茶色くなってしまう。押出機も小さいものに変えていった。温度が掛る時間を短くする為だ。分解がこれほど早く、ひどいとは予想していなかった。
二か月以内のサンプルを作るつもりでいたが、インドネシア人に任せる時間が長かったので、三ヵ月掛ってしまった。なぜ、塩ビにこだわったのか、比重が1.35にこだわったのです。ある程度の重さが必要という考えからでしょう。
とにかく、インドネシア人スタッフが殆どの事をやってくれたが、日本人の硬質PVCの大ベテランの方は、私は1.1倍を指示してあったが、インドネシア人が書いた製品の1.5倍の溶融金型の図面にOKサインをしてしまって、金型を注文してしまった。そんなに引き落としが出来るはずが無いことはしているはずだし、そんな大きな引き落としをする硬質PVCの金型は本社にあるはずが無いにもかかわらずである。なにも考えていない。その金型では出来るはずが無いので、新しい金型を作った。その金型費用は私の個人負担である。その次の冷却金型は大丈夫だろうと思っていたら、これも出鱈目、これも、私の個人負担で新しいものを作った。一か月遅れた原因でもある。
金型の図面の承認は、権限を無視して、私がすることにした。
入り口のRは出きるだけ大きく取り、面取にならないようにし、スムーズに溶融樹脂が入るようにする。というより、スムーズに入らなければRがまだ小さい、もっともっとRを大きくする。
金型の後ろに、隙間調整用の板を取り付けた。隙間調整にはよく使われる手段である。
金型の項で触れていますが、何に使うか見ただけで分かりますか。この断面を眺めた事が有る人はいないと思います。私も?マークでした。