○ LLDPE-tube
インドネシアのPT.KIIにおいてLLDPEとLDPEのチューブを製造する機会を与えられた。PT.Kといって、LIPPO CIKARANG側の工業団地EJIPにあるプラスチックボトルのポンプやキャップを作っている会社、日本の本社が製造から全面撤退しインドネシアに移管することに伴い、ポンプの先端に取り付けるポリエチレンチューブを現地で調達したいということでした。原料使用量、一ヶ月約5トン、24時間フル運転で一ライン半を、占領する。折しも、プアサ(断食月)に突入した11月中旬。話を持ちかけられたのがちょうど一ヶ月前でしたからスピード違反の量産のスタートダッシュにはいった。製造のトレーニングもそこそこにGOをかけた。チューブを作ることは何も問題はないが、問題は、カット物の量が多いことと、寸法公差だ。案の定、いろいろなことで迷ってしまって、仕事が遅いこと限りない。どういうわけか、皆さんはっきりした数値にこだわる、数値にこだわったら、もっと判断に迷うと思うのだが、結局、自分たちが最終的に責められることを恐れているのでしょう。そういう雰囲気になぜ、なってしまっているのか、それも問題だ。恐れを抱いて仕事をするなんて気の毒すぎる。
1 納期の厳しさとともに、品質的にも高度のものを要求された。
数千万円以上掛けた、チューブ製造装置の
品質 1 寸法公差 内外径 ±0.05
長さ ±0.5
2 本数 ±0
六百万円のチューブ製造装置の
品質 1 寸法公差 内外径 ±0.1
長さ ±1.0
2 本数 -0+α
差し込みやすく,ぬけにくいという矛盾が要求された。
まず、スパイラルチューブ用のチューブ製造法のバキュウームボックスでは表面状態がよくないし内外径のバラツキが要求より大きいが、ほかの方法ではスピードが上がらない。結局、気泡跡は少ないし小さいので無視して、バキュームボックスでやることにした。外径寸法公差については、検査方法として、現物に通して、ゆるいか、きついかで判断してもらうことにした。ノギスを使うのは検査データを記入するときだけ、人による感覚の違いは、生産しながら統一していくようにお互いにチェックしあって、最終的に統一した感覚をつかんでもらうことが狙いだ。
長さについては、今の自動カッターの精度でぎりぎりOK。ただし、問題は検査の方法である。±0.5の長さのチェックは、測定誤差がそれ以上に大きくて、所詮、できないお話。ではどうすればいいのか、客先に了解をとった上、マイナス1.0までOKにし、マイナス0・5~1・0の間はその人の判断でOKかNGかを迷わず即決する。ノギスは使わない、それぞれの目を信じる。
入り数の正確さについては、箱の前面を開いた形にし、整列で詰め込み確認している。驚きは、この箱を作るのが非常に早かった。その箱へ隙間なくしっかり並べていれると、定められた本数になるようにした。検査要員の人数分2日でつくってしまった。
B 原料が指定
日本から輸入するしかないのでかなり高いものになってしまうし、入荷のタイミングの管理も難しい。一種のテストとしては良い材料だと思った。日本人がいなくてもこのくらいのことはできて欲しい。これらの仕事をインドネシア人スタッフだけですべてが問題なく回転させることができるよう期待した。実際に始まってみると、やはり慣れないこともあって誰もが戸惑いを感じていた。私に聞いてくるが、できるだけ、答えないようにし自分たちで考えさせるようにした。「仕事のスタート時には、はっきり決まっていないことも多いので、仕事をやりながら、だんだん解決していけばいい。不安点を全部除いてからスタートするなら、いつになっても何も始まらない。全責任は私にあるのだから、心配することはない」と言い続けた。プアサ(断食月)に突入と同時にスタートし、土日の休日出勤もしてもらい、2台で、24時間フル運転で、二三週間後には、ほぼすべてが順調に回るようになっていた。日本人の手から離れた。彼らはすごいと思った。
この仕事も、あまりにも突然の量産開始ということと、寸法公差がきびしいことで、できるかできないか、判断に迷う代物だった。しかし、客先にはできますと断言した。多分、私でなければ引き受けることはできなかったでしょう。スペースのこと、検査の方法、デリバリーのこと、できない人にはこれらのことを、やらない理由にしてしまうでしょう。やるからには、客先にも、従業員にも不安を見せてはならない。リードする立場の人間が、不安や迷いを見せることは、全体の雰囲気を悪くする。
ボロブドゥール
スンビン スンドロ山
3 ポリエチレン原料について
ついでですら、通称PE(ポリエチレン)について書いておきましょう。プラスチックを扱っていると自称している人でも、分かっていないことがある。
ポリエチレンには、大きく分けて、四種類ある。LDPE,LLDPE,HDPE,UHDPEです。低密度PE,直鎖低密度PE,高密度PE,超高密度PEです。おなじPEでも、明らかに異なる、それぞれの特徴があり、使い分ける事は当然である。また、非常に仲が悪いので、混ぜる事はできない。
UHDPEは原料が粉末で、圧縮成形するのが一般的で、射出や押出で成形は一般的ではない。
また、残りの三種類の押出は冷却方法が違う。同じでは出来ない。一番難しいのはLLDPEです。
ですから、PEチューブの製造装置と言って装置屋から高い製造装置を買ってLDPEチューブが製造できるようになっても、LLとHの製造は出来ない、HDPEチューブ用の装置を追加購入すればHDPEは可能になる。ついで、LLDPEはどうか、おそらく装置屋で出来るところはないでしょう。もしあるとしたら、完全に安定してできる事を確認してから、契約してください。
自社で使うPEチューブを内製で、つくる会社はあるが、LLDPEは社内で出来ないので、外注せざるをえないという会社が多い。また、その外注先は収率が悪い状態でなんとかやるしかないのが現状でしょう。しかし、私の関連のところなら、普通に生産しています。
4 原料を換える。
PEに限った事ではないが、これも良くある話です。製品の形状も、図面と違うものが求められる事がある。図面どおりだと使い物にならない場合である。原料についても指定と違うものを求められる事がある。製品価格の値下げの為である。客先から原料は指定のもので無くてもいいから安いものを使って、製品価格も下げて欲しいといわれる。こちらは安いまた入手しやすい原料を手配し、製品を試作し、新しい見積もりと共に提供し承認を得る。指定と違う原料で量産が始まる。客先はその客先や本社に承認を申請しない。暗黙の了解というやつである。こちらから、指定原料を図面上も換えてほしいとお願いしてもなかなか変えてくれない。日本から輸入している押出品は原料が全て日本製である。だから、価格の面を考えればインドネシア産か東南アジア産に変更するのは誰が考えても当たり前である。
その後、担当者が変わると、図面についてまた原料について問題になる事がある。感情的になってもしかたがない。
引継ぎのとき問題が起きないようにしなければならないが、引き継ぐ相手の知識が低いと大変である。樹脂の種類から説明し、もうそこで頭がパニックになり、私が分けもわからない事を言っているという印象になってしまい、次の暗黙の了解などと言う事にまで、頭が追いつかない。かわいそうだが、理解できないのだから仕方が無い。この仕事はそういう難しさもある。
5 とんでもないおまけの話
K社からA社に押出装置を売ったので、当然、K社のお客さんだった会社はA社から、製品を引き継いで購入しなければならない。小学生でもわかる話です。
K社が客先に説明に行った時、価格もそのまま引き継いでもらうことが条件でA社に装置を売るということも、お客様に迷惑をかけないという重要な事柄である。これも、誰でもわかると思うのだが、K社は装置をA社に売るので今後はA社が生産を引き継ぎますといただけ、客先はどこも、おなじ価格で購入できるものと信じてしまうが、確認をしない。
ところが、A社の社長はK社からの値段の三倍で見積もりを準備している。
何年間の間、原料が高騰し、何倍の値段になっていたのでしょうか、それに対し、K社は値上げの交渉をすることなく、大赤字のまま生産を続けていた。
K社の製品は赤字で商売していたものがこのLLDPEのほかに何種類かあって、それらは、引き継がないことにした。というより、K社はみっともなくて、A社に渡せず、生産を打ち切る旨客先に謝りにいった。客先は納得して、成型会社を探し、A社に行き着いた。
A社が、見積もりを出したところ、三倍の値段だった。その三倍の値段が当たり前なのですが、K社は、価格を改定しようとはしなかった。
さて、チューブ生産の引き継ぎですが、生産能力がぎりぎりで、在庫を生産できない、という状態でずっと、生産しているので、機械に移動で生産ストップになるのは大問題、なんとかならないかと、K社、A社、KO社の社長さんが頭を捻っている。変な話で、そんなんことは何の問題にもならない、私ならたちどころに解決してしまうのに、三人とも、どうにもできない、私から打ち出しするのも変なので黙っている。それよりも大きな問題は価格でしょ。これをかいた、20081104時点でまだ、見積もりを出していない。
ラフレシアの蕾