この会社にしてみれば革新的なチューブの金型を作って皆さんに披露をした。目を丸くしてみている。歴史というものは怖いもので、私が40年も前にデザインした金型である。それがこの会社の人にとっては目が覚めたような新しい文化に触れたような眼差しであった。
組み立てながら、組み立ての作業標準書を作らせた。その中身も皆さんにとっては驚きの連続だったと思う、今までがいかにいい加減だったか、少しでも分かってもらえたと思う。
鋏で1.5mくらいに切っておき、三日四日後に、最後の工程、定尺カットは自動カッターがないので、植木職人の鋏でカットしてから、バリをカッターナイフで落とし、仕上げた。
自動カッターがあればラインで終わってしまう仕事である。
皆さん、よくできました。”花丸”である。と、思ったら、せっかくの初出荷、PT.SANYOのミートトレー部品でクレームが付いた。重大ではないが、システムの欠陥かシステムが規定どおりに運用されていないかのどちらかであることを象徴している。現に、QCのチェックのサインがない。素通りしている。製造現場のオペレーターの記録もないし、製造工程の検査記録もない。ないない尽くしで、納期が今日だから、集荷したと、工場長が言う。
客先からのクレームではじめて、NGであることを知り、現場の人間に文句を言っている。QCの責任者も一緒になって、文句を言っている。
製品をどうしようか相談に来た。全部、NGである。修正できるので、修正の方法を教えた。彼らは、ほっとして、修正のための作業を関係者全員が始めた。見事に、良品を出荷したが、何が問題なのか、誰もが、指摘しないし、ほっとした様子をしているだけである。
アイガー北壁に窓への入り口
そこで、指示したのは、続いて、製造作業標準の作成である。是が、大変。いい加減に作ってきた。同じような写真が紙面を占領し、書いてある内容はとぼしい。注意事項やコツやポイントポイントに関して何も書いてない。どう考えても、いくら作業標準は参考だけといっても、参考にも何もならない。「この通りにやったら、作業ができますか」と聞いたらできると言う。
それではやって見せてほしいと、やってもらったら、全然、できない。当たり前である。もう一度、内容を親切に説明し、初心者でも理解し、できることが目標に書き直しなさいと返した。
続いて、生産のフローチャートを求めた。有るという。それではすぐ見せてほしいといったが、なかなか出てこない。そこで、見本にフォームを途中まで書いて、このようにしたらどうかと渡したら、数日後、見本の通り、途中までのものを提出してきた。出荷まで、必要でしょと、返した。また、検査基準書と検査記録のフォームを求めた。現在、三から四種類、求めたものが、向うに渋滞している。
全ての書類はトライの時、平行して作られなければ、本生産に入ることができないはずである。もう、第一回の本生産は終了している。
結局、最終的には、チューブやプロファイル関係の製造工程表(フローチャート)を作ることから始まって、製造作業標準書、検査標準書、梱包仕様書、運転記録書、検査記録書、生産指図書を仕上げることになった。今までは、満足なものがなかったので、良い機会になったと思う。検査を誰がしたのか責任者の名前が無いのは最悪だった。
是を、ガスケットの製造工程で応用して、システムを作り直さないとISOを取得するなら、当然、必要になります。
一つ一つ、少しずつ、改善していきたいと思う。インドネシア人従業員も一生懸命なので、こちらもその気になって、教えていかなければならないと思っている。今回は、初めから日本人に教えるのでなく、インドネシア人に教える事になっているので、その点、割り切れる。そして、評価をする人間もインドネシア人である。納得ずくで全てを進めることができる。
ところが、一ヶ月も過ぎた今になっても、たたき台としての満足もできないフローチャートも出てこない。