柱について、以前はなぜか透明GPPSを使っていた。これは水槽の四つ角に使います。何かをぶっつけたりする場所である。ぱりぱり折れやすいGPPSは危険過ぎるので、HIPSに変えてもらった。この形状は、偏肉の最たるもので、曲がりと、厚いところに巣(気泡)ができやすい。巣を消す為には超徐冷をしなければならない。水槽の長さをたった40Cmにした。それで、巣は消えるが反り(R=500mm)は消えない。どうしても後修正が必要だ。4本束ねて電気炉で80℃でアニーリングをした。これで、やっと、まともな製品になった。
枠関係については、大変やっかいでした。まず、艶の問題、射出品と違って表面の状態を同じにする事が難しい上にHIPSだけでは艶が足りない。GPPSを大量に混ぜれば艶が改善される事は分かっていたが、後で問題になる、両端カットに差し支えがあった。結局、トライアンドエラーの結果20%混ぜることにした。
次の問題は、製品の曲がり、反り、ねじれ、閉じる、広がる、などの変形、勿論、原因は歪による事は分かっているが、あまりにも、気を使い修正する箇所が多すぎて、修正の位置や順序に悩まされた。生産のたびにそれが変わるので、オペレーターは忍耐強く、頭を使って、いちいち調整しなければならない。インドネシア人スタッフにとっては、押出はこういうものだという勉強になったに違いない。その点彼らを使う日本人がわかっていないのが大変残念である。
両端45°カット、これは押出成形屋さんの私達の仕事ではないが、どこかでやらなければならない。客先にとっては作るところにやってもらう事が一番便利、また、頼まれれば、何とかしてあげようというのが私の性分。インドネシア人スタッフに器用な人がいて、自分がやると、自発的に言ってきた。ディッキ君である。もともと、垂直に切る手押しの切断機は有った。それに、アルミアングルを45°にセットし固定しそれをガイドにして切る。それらの準備を彼が全てやってのけた。実に器用である。ただし、問題があった。それは製品の変形の問題で、切る製品の断面形状が微妙に違うので、切った製品を付き合わせてみると、微妙にずれるという現象だ。
それぞれは寸法公差にちゃんと入っているが、入っていても、ずれるのだ。そこで、自主的に寸法公差を狭くしなければならなかった。特に長さの公差はゼロにするしかなかった。ちょっと長めに切っておき少しずつ短くして公差をゼロにする工夫をした。ちょっとでも切りすぎればNGになってしまった。ねじれも全くゼロにしなければならなかった事は予想が付くでしょう。
45°カットの尖った端が欠けやすい事にも大変気を使った。先ほどの原料混合比にも大いに関係した。丸鋸の刃についても、常に研ぎに出し何時も新品同様のものを使わざるを得なかった。
傷が付きやすい
つめの先がちょっと触れただけでも跡が残る。切りカスをすっただけでも傷になる。艶がいいのでそれが、光の当たり方で、大変、目立つ。確実にNGであった。取り扱う人は最期まで手袋を使用した。最終的にはラップをし保護し出荷した。運転手にもハンドリングを指導した。それでも、どこで付けたのか擦り傷で返品が耐えない。なかなか、この点について責任を明らかにする事は難しい。
柱の原料
これは、完全に原料の問題、溶融粘度のバラツキが大きいというのではなく、融点のバラツキが大きいのだ。30℃以上は違う。最初は、サーモカップルやヒーターを疑った。普通、原料を疑う事は無い。今まで経験した事がないバラツキだから、なおの事である。結局、他に異常な点は無かった。原料を疑うしかなくなり、思い切って、全体の温度を40℃上げてみたら、問題なくできてしまった。この原料は他の射出成形屋が大量に使っていて、何の問題も出ていないという。というのは、射出の場合、流動性をよくするために温度設定が60℃も高くしてあるのだった。押出は溶融粘度をぎりぎりまで高くするため、温度をぎりぎり低めに設定しているからです。
やれやれでした。