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○ 膨張(軟化、加熱)と収縮(硬化、冷却)

 

まったく、簡単な基礎的な現象だが、押出成形にとって、このことを、うっかりして失敗することがあるし、このことを使って、成功することもある。なにか壁にぶつかった時このことを考えてみる。

A 製品の長さの延びと収縮(長さの管理)

 A−1 成形直後の長さより時間経過後は短くなる。こんなことは、百も承知だが、ついついうっかり、してしまうことがある。次のことが変われば変化の大きさも変わる。何年この仕事をやっていても、長さに関する失敗は忘れたころにやってくる。

  原料、生産速度、断面積の大きさ、冷却水の量、混合物(色)、バキュームの強さ、成形方法、など

  収縮の大きさは、製品が長くなればなるほど大きくなり、バラツキも大きくなる。生産のその都度長さについては変化後の長さを水につけるなどして確認する。

 A−2 ついでだから、1

  ナイロン製品の長さの変化は、始末が悪い。絶乾状態ならA−1に従うが、水を吸って伸びるので、その水分率によって長さが変化する。一般に、湿度60%気温25度なら3%前後吸水する、と、言われている。それでも1Mで3Cmも伸びるわけで、(成形後の収縮があるので実際にはそれほどではない)もっと水を吸えばもっと長くなる、大気中に放置した状態なら、湿度や気温によって、常時伸びたり縮んだりしている。考えようによっては、客先が使うとき、長さが公差に入っていればラッキーかもしれない。

  だから、このことも、永遠の問題である。

A−3 ついでだから 2

  スパイラルチューブの長さも始末が悪い。内径が自由に動くので、長さも自由にかわる。作ったばかりでも、元のチューブの径より小さくなる、時間経過とともに、もう少しちいさくなる。置き方、荷重のかけ方、ナイロンなら水分、などによって、保管状態でも少なからず影響を受け一定しない。生産直後、径がそろっていても後にばらついてくる場合もある。長さは長くなるが、径が小さくなればなるほど長くなる。

見かけだけで判断していては、実際にまきつけたときにバラツキが大きくなりやすいので、クレームからは逃げられない。

結局自然においた状態の製品では実際に巻きつけた時の長さがまったくわからない。見掛けバラツイていても巻きつければ同じになるかもしれないし、見かけ同じであっても巻きつけたらバラバラの長さかもしれない。

対策として、実際に巻きつける対象物と同じ径のパイプなり丸棒に、隙間なく巻きつけての長さを製品の長さとし、公差も決める。見かけはほどほどそろっていればOK。その方が実際的である。初取引の場合は、必ずこのことを、文章で、相手に伝えておく。そのうえで、問題がないうちは、わざわざこちらから提案することはないが、クレームが頻発するようなら、そうするしかない。

巻きつけた長さは、肉厚の変化でも変わる。




 
 B 金型のあわせ部(金属同士の付着)    

 金型のセットの中で基礎中の基礎、腕と指の力だけでセットできない金型は、セットを続けてはならない。何度皆さんにこのことを言っても、誰かが、無理に組んでしまい、解体できなくなったり、ボルトをねじ切ってしまったりすることが絶えない。繰り返し、解体、組み立てをしていれば、永久に何も不具合がないということはありえないのだから、いつかはメンテナンスが必要になるはず。

 ネバーシーズもついつい塗ることを忘れる。熱くなるボルトには必ず、焼き付き防止のため少し塗っておかなければならない。特に皆さんが忘れる場所はヒーターのボルトである。手を抜くというのではなく、熱くなる部分のボルトには必ず塗るということの意識が十分ではないからである。 

B−1 すり合わせ部

 ブレ−カープレートやスパイダーなど差し込んでセットするパーツは、セットしたあと、手で回すことが出来ることが必要条件。回らなければ、径がきついか、傷が邪魔をしている。必ず、直してからセットしなおすこと。しかし、このことは、十分条件ではない。

メス側が熱くオス側が冷えている場合は、抵抗なく入ってしまうが、その逆は入れにくい。最初、オス、メスとも同じ温度にしておかなければならない。

急いで金型を交換するとき、金型本体がまだ熱いので、冷えている新しいスパイダーは、同じ温度なら入りにくいものであっても、わりあい簡単に入ってしまう。組む人はそれでよいと思っていても、はずす人は大変になってしまう。はずすときは同じ温度になっているので、きつくなってしまっている。それを無理やりまわしたりしながら抜こうとすると、傷が出来てしまい、傷同士がめり込み、もっと、抜けなくなってしまう。悪いほうに悪いほうに、持っていてしまう。はずす人も、きつければ、無理に抜こうとしないで、スパイダーだけ、冷やすか、本体だけより熱くすることに気がつき、そうしていれば簡単にはずすことが出来たはず。セットする人も解体する人も、どちらも間違っている。最後は、金型を使い物にならないようにしてしまう。

B−2 ボルト

ボルトについても、まったく同じことがいえる。ボルトの場合はピッチが間違っていなければ、ゆるいきついはないはずだが、オス側が熱ければやはり膨張していて入りにくい、それを無理にねじ込めば、傷が出来てしまう、一度傷ができれば、どんどん増やしてしまう。抜くときもまた傷を増やしながら抜く、挙句には、途中で回らなくなってしまう。大抵の場合、そうなるまで、メンテナンスをしない。

年一回は長期休暇の前に定期的にすべての金型のボルト関係をメンテナンスするようにしたい。しかし、普段でも、ボルトは手だけでセットできる状態で作業をしたい。      

B−3 ネバーシーズ、(焼き付き防止剤)

温度を上げて使う金属と金属が横で接触する部分には焼付き防止剤を必ず塗る。螺子という螺子はすべて塗る。忘れるのが、新しいヒーターのボルト。

 スパイダーとダイボディーとのすりあわせ部分。ウエスで薄く延ばして均一に塗る。

C 曲がり、ねじれ、開き、閉じ
 この仕事をやっていれば、必ずいつかはクレームの対象になるはずの、曲がり、ねじれ、幅の変化、スパイラルの長さや太さの変化などの原因は、成形後収縮することが原因であることが多い。

 製品の長さが成形直後から収縮し始め、次第に短くなり、落ち着くには何日か後ということは、ごく常識だが、変形にも大いに、収縮とその大きさがかかわっている。一般に、このことを、残留歪という。歪が残っているため、自身で歪を解消しようとして変形をする。もし変形させないために、形を、物理的力をかけて変形しないように保った場合は、その物理的力がなくなったとき、一気に変形が起きる場合もある。

異形品の冷却金型の隙間の形状は大いにこのことを参考にしなければならない。

同じ製品内で、製品断面で冷却速度が同じではないことが、原因である。これも基本中の基本。もし、断面で均一に冷却できたら、多くの心配事がなくなるが、まったく不可能である。出来るだけ均一になるように工夫するしかない。



 

  
 C−1 チューブ、パイプ、プルファイルは厚い方に曲がる。製品がチューブのようにふさがっているものの偏肉を直すには内曲がりになっている側を押せばいい。真っ直ぐになれば偏肉も直っているはず。プロファイルはそういうことが出来ないから、厚いほうを早く冷却し、薄い方と冷却速度に差がないように近付けるしかない。

 C−2 開いている製品の状態は、エッジングが典型的な見本です。製品の冷却速度は外側が速い、内側が遅いので、一般的には両足が閉じる方向になる。開き具合をコントロールするには油かけ具合、量や位置を変える。製品の内側に入っている油の位置が前後に動いているときは、足の開きも動いている。また、頭のほうが遅く、足の先のほうが早いので、製品は頭のほうに反る。昔から、このことは問題になっていないので、直そうとはしていない。

C−3 チューブの場合は、外側が早く冷え、内側が遅れるから、内側に閉じようとする歪が残っている。立て割れに切れば内側に入る。スパイラルはそれを斜めに割ったのとおなじだから、内側に閉じ、径は小さくなり、長さは長くなる。生産時のさまざまな条件のちがいによってその変化度はことなる。

D 外れなくなってしまった、金属同士

 はめ込んであった、金属部品が外れなくなってしまった場合は、無理に金属でたたいたり、パイプレンチで回したりしないで、動かなくなってしまった時点で、金型全体をバーナーで熱くする。できるだけ、オス部分だけを急激に冷やす。収縮して、スポッととれる。誰かが、さんざんねじりまわして、傷だらけになったしまったあとではそうはいかない。

ボルトでも同じ、ねじ切るまで無理にまわしてしまえば、もう、もし外れてもボルトの穴自体が使い物にならなくなる。そうなる前に、赤くなるまで熱して、冷やせば簡単にまわすことができる。ボルトをはずすとき、最初は若干きつい、次第にきつさが増してくる、まだまわる、まだまわる、もっと回してしまえば、もっときつくなり、最後には右にも左にもうごかなくなってしまう。ここまでやってしまうのはまったくの常識はずれ。ちょっときつくなったところで、熱するやり方に頭を切り替えなければならない。

E 焼きばめ
 金属同士で、熱膨張を使って組み込んでしまう方法のこと。内径が同じかちょっと大き目のオス部品は常温のまま、メス部品は赤くなるまで熱して膨張させる。そこに、オスをいれ、冷えたあとには、完全に抜けなくなる。
 
F 丸棒、厚板のス
 
丸棒を作った経験のある方なら、常識的に知っていなければならないことです。中に空洞が出来る現象である.チューブなら外側から冷え始め内側ほど遅い。早い方が収縮が少なく、遅い方が収縮が大きいが、外側外側にくっついて、内径が大きくなる。丸棒のように内径があってはいけないものは、中心が一番ゆっくり冷える、ということは一番収縮し体積が小さくなる。だから、外側から引っ張られている。引張られている状態でまだやわらかければ空洞が出来てしまう。巣があるかないかは超音波探傷器(エコー)を使って調べる。
  
 其れをなくすのは簡単である。断面を同じ速度で冷やせばいい、収縮度が同じになるから、巣は出来ない。もう一つの方法は、巣が出来そうなところに圧力を掛けて樹脂を詰め込めばいい。
  
 大きな口径の丸棒や厚い板を機械加工する時は、其の丸棒に歪が残っているので、刃を入れた瞬間に爆発的に砕け飛ぶ危険がある。出きるだけ歪をなくす為に、アニーリングをしてから出荷するのが普通だ。アニーリングで巣を消すことは出来ない。
 
  POMの丸棒が一番歪が大きくなる。どんなに小さくても、真ん中に密度が小さい場所が出来てしまう。空気が入っているように白くなる。これを解消するには、全体を徐冷し内外の冷却速度を同じにする。グリセリンかポリエチレングリコール(アニーリング浴そうに使う)を100近い温度で、冷却用に使う。

    








                           アナック クラカタウ

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プラスチックの膨張と収縮