塩ビとその他樹脂の比較
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 塩ビとその他の樹脂 

A 塩ビの押出成形については、ほとんど経験がない。なぜ、塩ビに手を出さないかというと以下の理由によります。

1 押出の成形を始めたころ、すでに塩ビの押出成形の会社は何社かあった。基本的にはすでにほかでやっているものはやりたくなかった。

2 案外簡単に成形できているので、将来、単なる価格競争になってしまうと思った。競争はあまり好まない。

3 塩ビは溶融したときのにおいがきつい。燃やしたとき黒い煙と煤を巻き上げる。

4 比較的大型の製品が多いし、それだけ、原料も製品も大量にストックしなければならない。また、可塑剤など添加物の配合設備などが必要になり、工場の規模が大きくなってしまい、成形技術以外に、さまざまなことに神経を使わなければならなくなる。会社が肥大化することは望まない。

5 他の樹脂と基本的なところで成形方法が違う。塩ビが優先になり、設備的にも技術追求の視点からも、他の樹脂を扱う余裕が無くなる。

6 もともと6ナイロンなどエンプラの押出から入っているので、実を言うと塩ビの押出に自信が無い。私にとって他の樹脂のほうが、扱いが簡単。

以上の点から、塩ビに手を出したら融通が利かなくなり余裕がなくなると考え、塩ビだけは避けようと決めてしまった。基本的に皆さんがやっていることはやりたくないし、横並びは避けたい。

 ほとんどやったことがないといっても、止むを得ず、扱ったこともあるし、何社かの塩ビ押出工場を見せてもらったこともある。感覚的に、やはり他の樹脂とは区別される存在だと思う。塩ビは塩ビ屋さんに任せた方がいい。

以前から言われていて、近年、脱塩ビの声が大きくなっているようです。ほかの樹脂でも体にいいとは思えないが、もともと、健康によくないということは、塩ビの会社の人たちはわかっていることで、あのにおいが、健康に影響しないわけがない。原料メーカーも承知のこと。代るものがあれば、とっくに代わっているはず。無いから、今でも、脱塩ビとはなっていない。

 硬質塩ビから、他の樹脂に代わらない理由。他の樹脂と比較して、

1 原料価格が安くて手ごろ。  

2 外観、物性ともによい。

3 冷却金型と密着させて成形できるので寸法を出しやすい。金型の設計が容易。

4 口金から出てくる溶融樹脂の形状が隙間とあまり変わらない。

5 溶融粘度を調整しやすい。

6 冷却速度の範囲を広く選べる。

7 残留歪による成形後の変形が少ない。



   8 切断面の仕上げが容易。

9 添加物をブレンドすることにより物性を調整しやすい。

10 型離れが良く、金型のメンテナンスをしやすい。

そのほかにもあると思うが、これだけでも十分、複雑な形状ができるし、多色や多層を含めさまざまなバリエーションの成形が可能。成形速度も上げることができる。

いろいろな意味でPVCは、成形において優等生である。不思議なことに射出ではあまり使われない。なぜなのか調べたことはないが、PVCを使わなくても同等かそれ以上の製品を作ることが難しくないからでしょう。

 その他の樹脂はいずれかが、塩ビに劣るため、成形がむずかしく、価格的にも、物性的にもなかなか置き換わらないのです。

勿論、どこの塩ビ押出メーカーも、他の樹脂の成形にも取り組んでいますが、なかなか、塩ビほどにはできない。それが、当然なのですが、うまくいかなくて苦労をしているようです。塩ビの成形に長年携わってきた人々にとって、他の樹脂との成形性の違いに、戸惑うのが普通のようです。

 それぞれの経験によって、異論はあるでしょうが、また、グレードにもよるでしょうが、プロファイルの成形しやすい順に並べてみました。       

軟硬質PVC  HIPS  ABS PU PMMA GPPS 各種PP  N12 N11 LDPE  TPE N6 PC  PBT PPS HDPE  N66  POM  PET ウルトラエンプラ各種

HIPS ABS辺りまでは、塩ビとほぼ同じ考え方で成形可能でしょうが、それ以降の樹脂は、塩ビの成形方法ではなかなか難しい。現場でそのことはやってみればすぐに理解できると思う。しかし、発想の転換は、何も知らない人が、始めてやるより難しいかもしれない。押出成形の技術専門書は大変少ない。そのうえ、内容は塩ビの成形に関する特許や実用新案の公報から仕入れてきて若干の解説を加えているだけのようなものが大部分なので、オレフィンやエンプラの技術についてはまったくないといっていい。ノウハウについては一般的には公開する趣旨のものではないので、専門書には載ってこない。

 
  塩ビのネックは、分解しやすいこと。金型内に溜まりを作らないことが条件。分解すると表面が荒れるが、それ以前に、黄色っぽく変色する。また、塩素ガスは毒ガスである。

        押出でチューブや異形を作りやすい樹脂
溶融金型(口金)から製品そのものの寸法の固まった状態で出てくれば一番成形しやすいことはお分かりでしょう。また、その状態に近い方が形を安定して出しやすいでしょう。口金から、トロリと垂れてしまう状態では横に引張る事はできず、冷却金型にもペタペタくっ付いてしまって引張れないし、バキュームも効かせ難い事は一寸経験した事がある人なら想像がつくでしょう。と言う事は溶融粘度MFR(MI)(MFI)メルトフローレイシオが小さい方が押出成形はしやすい。溶融粘度(固有粘度)!V値(Intrnsic viscosity)が高い(大きい)ほど成形しやすい事はお分かりでしょう。相対粘度(イータアール)は大きいほどやりやすい。
 射出はその逆ですね。原料メーカーの物性表の一番先に乗っているのは比重(密度)デンシティです。その次が溶融粘度の冠するMFR,IVやηrである。
  成形にしやすさ難しさはその溶融粘度を一定の硬さにコンテロールできやすいか、できにくいかで決まる。塩ビはコントロールを飛びぬけて一番しやすいのです。PETなどはIV値であらわすようですが、0,6〜0,7ではとてもじゃないがチューブを作るのは難しいし、冷却速度で重合度も一定にできず、見た目が不透明になったりする、非常に成形しにくい樹脂の一つだ。

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