○ 製品の湾曲加工
ほとんど常識として覚えておかなければならないことに、「あらゆる物質は、ゆっくり冷える方が、体積は小さくなる」ということがある。何か問題があったとき、このことが関連している場合がある。
チューブは基本的には真っ直ぐでなければならない。なぜ曲がってしまうか、冷却速度が円周で違うから、遅いほうに曲がる。偏肉で厚いほうが遅い、厚い方に曲がる。異形製品は肉厚に偏りがあるものの方が多い。当然曲がりやすい。コの字形のように開きがあるものは、開きの反対側に反る。外径規制で作ったチューブを縦割れにすれば割った部分が内側に重なる。広がって隙間ができることはない。内側のほうが遅く冷えているので小さくなろうとする歪が残っているからです。スパイラルチューブが、元のチューブより、径が小さくなり、長くなるのも同じ理由。前述したPOMなどの丸棒の砕けも原因は、中央ほど体積が小さくなろうとする歪のためです。
A 曲げ加工の依頼はそれほど多くない。真っ直ぐな製品を作るのが当たり前。しかし、製品断面形状により、また、樹脂により、曲がりやすいものはある。なにもしなければ、偏肉が大きければ大きいほど曲がりも大きい。それを直すには水槽の中で逆曲げの力を加える。そういうことができるということは、まっすぐな製品を、依頼があれば、水槽の中で曲げてしまうことができるということです。
以前、自転車の泥除けを作ったことがある。あれほどの湾曲は水槽の中ではできないだろうと考えてしまって、真っ直ぐなものを作った後工程で、上下ロールの回転速度をそれぞれ独立で調整できる曲げ加工機を作った。低速の方に曲がり、押さえ圧と速度の差でアールの大きさを調整できる理屈である。求めるアールは大体できるのだが、微妙な肉厚の差で押さえ圧が変わるため、アールが微妙に変化した。左右のバランスも難しく、ねじれが消えなくて収率が悪かった。
あまりにも不良が多いので、深い水槽を作ってその中で曲げてしまおうと考えた。引取りの後、引取機を押込機にして、十分に固まっていない状態のとき、邪魔物を置いて曲げてみた。速度が違うロールなど使うよりはるかに安価で、アールも自在だし、安定もした。Simple is the best.
B インドネシアでも車の天井シートを取り付けるための、PPトリムシートという部品がある。これは、1200mmくらいのアールを付けるのですが、水槽の中で、曲がり癖をつけるだけでできてしまう。
私以外はぜんぜん知識がない人ばかりなので、私が、機械はいらないし、後工程ではないから加工賃もいらない。簡単にできるといっても信用しない。見積もりを出す段階で、曲げ加工機の価格がどうの、加工のアワーチャージがどうの、スペースがどうのと、あげくは出来ないと言い始めた。客先にとっては押出製品を全部PT.KGから、手配したいと思っているのに、これだけはできませんと言える神経は私には理解できない。たとえ、できそうにないものでも、何とかしてやろうという精神がほしい。
実際、製品になって初めて信用してもらえた。曲がりを見て、「なんだ、簡単だ」。これも、但しがある。成形直後のアールと一日後のアールは違う。一般的には、より小さくなる。その違いを計算に入れて直後のアールは、大きめにしておかなければならない。
形状が落ち着くまでには一週間は掛かることを承知しておく。
○ コイリングチューブ、三次元曲げ加工
チューブや細い丸棒をスプリング状にくせを付ける。エアーガンのホースとして、黄色や赤のコイリングチューブが天井からぶら下がっている組立工場の風景はよくあります。原料はナイロン11か12、PUがほとんどです。
最初は丸棒に巻きつけたチューブを、熱風乾燥機やアニーリング槽で加熱した後、水につけて形を固定した。しかし、能率がわるい。自分の重さで部分的にチューブがつぶれて楕円になりやすかった。
作り方はいたって簡単。チューブを丸棒に巻きつけておき、チューブの両端に三叉管を取り付け、120〜130℃の熱媒(ポリエチレングリコール、グリセリンなど)のコックを開き、一定時間通し加熱し、次に水コックに切り替え、水を通して、熱媒を取り除くとともに槽に回収しながら冷却し、形状を固定させる。丸棒からはずし、空気で水を吹き飛ばせば出来上がり。丸棒にはチューブを一定の長さに切っておいて、旋盤を使って巻きつけた。連続加工も考えたが、両端のストレート部分が難しいことと、その必要があるほどの注文が多くないので、やめてしまった。
両端ストレート部分が無いものは、出来上がった後、ひっくり返すと、より強力な反発が得られることがわかったので、すべてそうした後に出荷した。
チューブの曲げ加工もいたって単純。一番簡単な方法は、曲げたい部分に釘などを打っておき、それに沿ってチューブをまげ、そのまま、コイリングと同じ種類の液に一定時間つけておく。取り出して水洗いをすれば出来上がり。車のエンジンルームや見えない場所で6ナイロンの三次元曲げ加工チューブが多く使われている。
ラッパ加工、フレア加工、蛇腹、縦割れ、プレス、斜めカットなどなどさまざまな後加工がある。これらも、単純な道具を作りさえすれば、簡単にできる。連続化、自動化、大量加工ということなら、話は別で、それなりの装置が必要になるのはいうまでもありません。