○ POM ポリアセタール
40年以上押出成形をやっていてPOMの溶融異形押出でまともな異形製品にお目にかかったことがない。インドネシアに10年いたので、浦島太郎状態で、実際は異形品が出来ているのかもしれない、どうでしょうか。
多分純粋な溶融押出ではないと思うが、ラックが唯一のそれらしき製品として見たことがある。簡単なエッジングのような製品でもまともにできていないと思う。需要がそれほどないということも確かで、各原料メーカーもこのテーマについてはさじを投げているようだ。
感覚での原因 1 固化速度が速すぎる。
2 冷却速度の違いによる変形が大きい。
3 収縮が大きい
チューブの成形も難しく、まともに作る会社は日本でも数えるほどだ。需要があまりないので追及がされていないのかもしれませんが、原料自体、冷却特性が他の樹脂と比較して特殊すぎる。一部ウレタンとのアロイの原料を除いては、原料からも成形方法からも検討が進んでいない。
三菱のエスカレーター薄型クリップは6ナイロン(二硫化モリブデン混合)で出来ているが、ナイロンは水分の影響で伸び縮みをする。長尺で使うものは、それが問題になることが多い。滑りという点でも本当はPOMの方が向いているはずだが、POMではできていない。私もやってないのでできない。私が頼まれればPOMで薄型クリップ作ってみたい。インドネシアでタイからこの話があって、6ナイロンではサンプルを出したが、T社の内部事情で潰された。POMでやるチャンスだったのに残念である。
いずれ、時間があればこのテーマに挑戦してみたい。インドネシアで遊んでいてはもはや時間がないか。どなたか挑戦してみたらいかがでしょうか。
A 樹脂の扱いが難しい。
1 水分は最低限に押さえられているがそれでも、予備乾燥をしなければならない。乾燥が足りないと分解したように表面がざらざらの状態で出てくる。
2 分解が早いので、滞留時間を短くしなければならない。金型内の滞留部をなくさなければならない。
温度を下げてしまい、再メルトさせる場合は特に危険である。ホルマリンガスで泣き出すくらいならまだいいが、隙間から噴出してきて目に直撃したら大変なことになる。
3 異物の混合は絶対だめ。どんな小さな埃のようなものでも表面に出れがへこみとなって目に付く。だから、不良品をリサイクルして使用するのは大冒険である。うまくいかない。
4 また、違う樹脂との仲が全く悪い。なじまないので、成形をする時に混ぜることは出来ない。分離してしまうので、製品の表面からはがれて全く汚くなる。
B パイプ、チューブは、ドライキャリブをずっと使っていた。6ナイロンと全く同じやり方をしていた。ただし、入り口の間接冷却を、6ナイロンは、急冷に対し、POMは、超徐冷にする。ほとんど冷却水は流さない。沸点が150℃くらいの冷媒を使えばなおよしである。
ノズル、マンドレルの組み合わせはこの樹脂が、一番、融通が利かない。徐冷するために速度は可能な限り速いほうが表面はきれいだった。それでも、キャリブの内側にモノマーが付着し、短時間で磨きなおさなければならなかった。収率が悪いながらも当然のようにそのままで成形していた。
一回の生産量も100Kg程度が最大だったので、何とかそれで、推移していたが、あるとき1トンほどの連続生産をしなければならなくなった。長時間安定生産の方法を何とかして考え出さなければ大変な量のロスができてしまう。硬い樹脂なので楕円も含めて、寸法公差も±0.05を求められた。しわのような筋は絶対認められない。テープを送るローラーに使われた。
Cモノマーが付着しないように、ウエットでやることに決めたが、ウエットということは、予備冷却をするということ少しでも直接水が掛かってしまうことは致命的。水が掛からないで、キャリブはウエットにしなければならない。瞬間急冷するためには、やはり、キャリブの前でしごかなければならない。ポリカペンダント用のチューブの生産と同じ方法だ。
S.P(サイジィングプレート)のランドを0.3にし、そのすぐ後ろでS.Pと製品を急冷した。S.Pとキャリブの径はほとんど同じにした。表面はつやが良くなり、モノマーによる障害もなくなった。しごいた直後に徐冷という方法は、この後、すべてのPOMチューブ、パイプ生産で活躍している。