クロスヘッドダイ
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 クロスヘッドダイ
 押出機と直角に金型を着け、金型の後ろからマンドレルの穴に様々なものを通しう安くするするために、デザインされた金型である。成形ラインに対し押出機は直角に横を向いている。これに対し、一直線のラインの場合はストレートダイという。また、クランク状の金型をオフセットダイという。ほとんど見た事がない。
  
 ABSで、外径50φ、厚さ0.5のパイプ、糸の巻き取り用ボビンスリーブの成形をしたときのこと。今から考えればなにもインサイドマンドレル(I.M)方式でやる必要はなかったと思うのだが、入社当時、すでにI.Mで生産していた。I.Mの場合には、冷却水をマンドレル内に循環させなければならないので、一般的にはクロスヘッドダイを使う。余談だが、後にストレートで空気穴を使って水を循環させたこともあった。金型が複雑で価格的にも高い割にメリットは押出機が真っ直ぐなだけ、今は使っていない。




 問題は、本体の方のマンドレルの形状である。普通、押出機から出た樹脂はマンドレルを包み込むようにして本体に入り、押出機の反対側で樹脂が出会う。そこに、ウエルドラインができる。ABSなど比較的溶融粘度が高い樹脂はそのウエルドラインがなかなか消えない。その部分だけ筋状に薄くなってしまう。偏肉調整のとき、ウエルドライン側を厚くすることも必要になる。そうすると、製品が曲がりやすい。ABS(トヨラック)も世に出たばかりで、練の具合が不十分だったのでしょうか、表面にブツブツが浮き上がってしまうこともあって、不良品の山を築いていた。入社当時見た宝の山の一つだった。この製品のおかげで、あまりにも不良が多いし、不良のまま生産を続けているので、入社4ヶ月目、まだ実習期間中でしたが、製造部長から夜勤の検査員を頼まれた。 

余談、 夜8時から朝8時の12時間。現場の先輩からいやな顔をされながら、基準通りに製品を判断していた。新入社員の嫌われ役は孤独でつらかった。土日も続け、二週目の金曜日、朝、仕事が終わり、沼津から静岡の病院へ行き父親の手術ということで、300CC献血、一睡もしないまま金曜の夜勤に出た、土曜の明け方、急激な腹痛になってしまった。近所の国立病院へ行かされた。土曜日、専門医が学会に出かけていて不在、痛み止めを注射されて緊急入院という事態にまでなってしまった。しかし、病院へついた頃から痛みはなくなり、昼前には完全に何でもなくなっていた。 看護婦は、医者がなんと言うか分からないので、食事は重湯とお粥しか出してくれない。お腹が空いてしまってどうしようもない。日曜日、見舞いに来た人に話したら、外出して長岡へバーベキューを食べに行こうという。直ぐに、戻るつもりで、外出許可を貰い出かけ、腹いっぱい食べた。10時ごろから15時位の外出だったが、看護婦が探し回ったらしい、戻ったとききつくしかられた、先生に報告しますからね,とも、言われた。月曜日、医者が回診に来て、「君は何故ここにいるんだ」、と聞かれ、「看護婦が止まっていけといったから」 と、返事した。「もうなんでもないなら直ぐ帰りなさい」 直ぐ退院した。結果はお騒がせの単なる疲労による急性胃炎で、月曜日には退院した。朝のうちに寮へ帰り、会社の事務所に行き「お騒がせでどうもすみません」 ちょこっと頭を下げ、工場に入って仕事を始めた。無茶な仕事をしたが、元をただせばクロスヘッドのマンドレルが原因だった。

その約二年後、押出のメンバーとして、この金型の改良に取り組んだ。ウエルドラインを無くすにはどうしたら良いか、流れを分けないようにするにはどうしたら良いか考えた。まず、アダプターからの流れをマンドレルの周り回るようにしてみた。溝だけ作ってランドで開放した。ウエルドはなくなったが、流れの回転が消えず、偏肉の具合が変則的で調整ができなかった。

この解決は以外に簡単だった。回転部分と直接出口方向に流れるような隙間を作ってやればいいことがわかった。ノズルトマンドレルの隙間をテーパー状に出口に向かって広くし、ランドでまた絞った。この方法でボビンスリーブを作るようになってから、混練りの状態も良くなったのでしょう、表面のブツブツも劇的になくなった。偏肉調整もしやすくなった。

 現在もこの形のスパイラルマンドレルを使っている。多層チューブの金型もこういうマンドレルをコンパクトにしていくつかをつなげて使っている。

 つい最近、押し出しの新技術紹介の雑誌をみる機会があった。アメリカだったか、どこかのパテントで、私が30年以上前に作った金型のそっくりさんが、紹介されていた。

クロスヘッドダイは様々な応用が利くが、コーティング用に使うことが多い。電線を作る時はこれを使う。ノズルマンドレルの先端の形状は基本的には二種類ある。密着型と袋掛け型である。